学校

給食のチーズと石けん

チーズと石けん

 大人になるまでチーズが嫌いだった。原因は小学校の給食だ。東北地方の田舎町。楽しみの完全給食がようやく始まったばかりの頃で「出たものは何でも残さず食べること」は当然の時代だった▼ある日、コッペパンと脱脂粉乳のほかに、野菜の煮つけがおかずに出た。見ると私のアルミ椀の底に白菜や人参、ジャガイモなどに隠れて何やら白い固形物がある。かじってみたら石けんだった。教壇で食べている先生に訴えたが「チーズだから食べろ」と聞き入れてくれない。結局一人泣きながら教室に残された▼ここ数年は新型コロナ禍に隠れているが、学校給食の現場では過剰な「完食指導」が問題視されている。指導の行き過ぎで体調不良や不登校、さらには「会食恐怖症」になる子供もいるのだという。幸い私はビールの味とともにチーズの美味しさを知り、トラウマにならずに良かった。そう言えば、故郷の学校給食では、今でも野菜の煮つけにチーズを入れているのだろうか。(399)

(2022・6・19)