相撲

あの時の少年

 この頃ふとしたことで昔を思い出す。先日テレビで大相撲初場所を観ていた時もそうだ。たまたま三役格行司の木村晃之助(57)が岩手県一関市出身だと紹介され「あの時の少年だ」と気がついた▼私の最初の就職先が一関の新聞社だった。大相撲夏巡業の一関場所を主催していたので取材に行くと、当時中学3年生の木村晃之助こと小島俊明さんに出会った。体はきゃしゃだったが「卒業して行司になりたい」と言う。小島さんはその日、当社社長の仲介で九重親方(元横綱北の富士)に面会し、九重部屋に入門が決まった▼その後私は勤め先を変遷したが、小島少年は初志を貫徹し4年前に三役格行司に登り着いたのだ。朱色の装束をまとい、時間前には左足を前に右足を後ろに引く独特の構え。立ち合いは厳しく「手をついて」と時には大声で力士に促す。そんな態度に好き嫌いもあるようだが、無類の行司としての真剣勝負ぶりだ。今後も動じず毅然たる姿を見せ続けてほしい。