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フロントの風

 科学記事は(一般の記事もそうだが)「やさしい言葉で正確に書く」のが鉄則だ。何よりも読者にすんなりと理解してもらうためだ。その便法として言葉の「言い換え」や「例え」がある▼先日、日本を縦断した台風14号では秒速60㍍以上の最大瞬間風速も予想された。それがどれだけの強風なのか。あるTV局の気象予報士は「1秒間に空気が60㍍移動する速さ」、他局の人は秒速を換算して「時速210㌔で走る電車と同じスピード」と事象を解説していたが何か今一つだ。さらに例えて「時速210㌔で走る超特急の〝フロントで受ける〟風の強さ」と、受け手視点の説明を加えてはどうだろう▼以前の職場でのメタボ検診を思い出した。すぐ前で腹囲を測定中の先輩が、元気な看護師さんに「ハイ、1㍍」と言われ、周囲の爆笑を買った。「腹囲100㌢でも、メートル単位で言われるとドキッとするなぁ」と先輩。言い換えで、受け手にインパクトがあったのは確かなようだ。