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この世は3拍子

 高校時代、吹奏楽部でパーカッションをやっていた。その因果か知らないが、今も拍子やリズムには多少こだわりがある。文章表現でもそうだ▼スラスラと心地よく読める文章にあこがれ、行き合ったのが向田邦子のエッセイだ。なぜか?と考えて、発見したのが3拍子のリズムによる文章の展開。彼女は基本的に三つの文を連ねて話題を進め広げて行くのだ。見渡せば日常にも3拍子は多い。ジャン・ケン・ポンや三段跳びのホップ・ステップ・ジャンプ、応援団の三三七拍子や新郎新婦の三三九度、俳句は五七五の3句、短歌はそれに七七の2句を添えて全体が三句構成だ。実はこのコラムも意図しての3拍子だ▼以前、通勤途中の秋葉原駅前で年配の路上音楽家が演奏していた。バンジョーとハーモニカ、足のバス太鼓による2拍子の軽快曲。気がつくと私も周囲の人たちも、その曲に合わせて行進している。しゃくに障るので3拍子で歩いたら、妙な歩き方になってしまった。