【新聞考】新聞記事はミステリー

「親は子に５Ｗ１Ｈを質問しよう」。こんな会話指南のＷＥＢサイトがあった。子供の意識と能力向上が狙いというが、何か警察官の職務質問のようで心配になる▼５Ｗ１Ｈとは、(When)・どこで(Where)・誰が(Who)・何を(What)・なぜ(Why)・どのように(How)のこと。新聞記事の重要な要素でもあるが、記事にはいつも全部がそろっている訳ではない。例えば殺人事件。発生当初は「誰がいつ、どこで、どんな方法で殺されたのか」「犯人は誰で、なぜ殺したのか」など分からないこと（要素）の方が多い▼自他社の新聞記者が「抜いた、抜かれた」と鎬（しのぎ）を削るのも基本は５Ｗ１Ｈの要素についてだ。「他社に抜かれた記事を読み、欠けている要素（事実や真相）を素早くつかんで抜き返すこと」。それが何度も敗北して得た〝特ダネ返しの術〟だ。そして現役を退いてから得た教訓が「要素を欠いた新聞記事はミステリー。次の展開が面白い」。もはや読む側の立場だ。